とても面白い本を読んだ
各論では、いろいろと不備もあるのかもしれないが
19世紀西欧の文化を包括的に語ろうという一冊
- 平島正郎・菅野昭正・高階秀爾『徹底討議 19世紀の文学・芸術 新装版』(青土社,2000年5月)
感想も書いた ⇒ こちら
1974年~75年にかけて『ユリイカ』誌上で発表された連続シンポジウムの記録なんだそうだ(当該誌および旧装版、未見)
その第Ⅵ章が 「宗教と反宗教」となっている
平島先生による報告「十九世紀における聖なるものと俗なるもの」がまずあり
それに対し 各氏がコメントしていく
高階先生の発言から 一節を抜粋しておく
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世俗化の傾向というのは、逆に意識的・無意識的に新しい宗教感情を養っていくというか、そこに宗教感情を託すような傾向として捉えてはいけないだろうか。ぼくがそう考えるのは、最初のお話にあったし、途中でも出た問題ですけれども、十九世紀の宗教感情というのはカトリシスム以外に、非常にひろまっていく。これが異端、邪宗、いささか怪しげなものにまでひろまっていくわけです。悪魔主義的なものにもなるし、オカルティズムにもなる。そういうものがひろまっていくのは、ロマン主義以来、非常に大きい欲求が宗教的なものに対して出てきたんじゃないかという気がする。その意味では十八世紀のほうがもっと理性を信頼していて、つまり百科全書なんか一生懸命つくって、神さえもともかく理屈で割り切ろうとした。それに対して、そういう理屈で割り切れない世界、非合理なものの世界というのが非常に大きくクローズアップされてくるのが十九世紀だと思う。
236頁
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